大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

浦和地方裁判所 昭和41年(行ク)2号 決定 1966年11月15日

原告 宮岡喜久治 外八名

被告 西武町選挙管理委員会

主文

被申立人が西武町議会解散請求者署名簿の署名に関する申立人らの異議申出に対し、昭和四一年一〇月一四日になした審査決定に基づく手続の続行は、浦和地方裁判所昭和四一年(行ウ)第八号議会解散請求署名異議申出審査決定取消等請求事件の判決が確定するまで停止する。

理由

申立人ら代理人らは主文同旨の決定を求め、その理由は、

一、申立人らはいずれも埼玉県入間郡西武町議会の議員であるが、被申立人は同町議会解散請求代表者申立外滝沢貞造外三名の収集した右請求のための署名簿の提出を受けて右署名簿を関係人の縦覧に供したので、申立人らは被申立人に対しその署名に関し異議の申出をした。

二、そこで、被申立人は昭和四一年一〇月一四日右申出の審査決定をしたが、申立人宮岡喜久治は申立外清水喜一外一七名の、申立人平岡甚吉は申立外浅見信子外二六名の、申立人宮岡徳次郎は申立外土橋直次外一八名の、申立人西久保友司は申立外小久保初子外二二名の、申立人宮岡清一は申立外志村軌三外八八名の、申立人鈴木茂助は申立外佐野好次外九八名の、申立人諸井宗鶴は申立外諸井きく外二五名の、申立人中沢茂は申立外清水キヨ外四三名の、申立人高橋市右衛門は申立外西海初枝外四三名の各署名に関する右決定には不服なので、その取消を求める訴を浦和地方裁判所に提起し、右訴は現在同裁判所に係属中である。

三、そして、被申立人のなした右審査決定は次の理由により取消されるべきである。

すなわち、右署名の中には現在判明しているだけでも(イ)署名簿第二七号29、49、84、106、108のように自書でないもの、(ロ)署名簿第一七号15のように右審査の際宣誓の趣旨すら理解できなかつた精神異常者のもの、(ハ)署名簿第一三号34、35、63、64のように収集無資格者が収集したもの、(ニ)署名簿第二五号17、18、第二七号13、14、21~23、56~58、97、98、110、第二八号71、140、第三〇号43のように詐欺または強迫によるものがあり、これらの事実に徴すればその余の署名も無効であることが容易に推測できる。

四、以上のように被申立人が有効とした署名の中には無効なものが多数存在し、しかも被申立人が有効と判定した署名数は解散請求に必要な法定署名数を僅かに二三上廻つているに過ぎないから、右訴訟の結果署名が法定数を欠くに至り、本件解散請求が成立しなくなる確率が非常に高いのにかかわらず、被申立人は滝沢貞造ら解散請求代表者からの請求により同町議会の解散を選挙人の投票に付する手続を進めている。しかし、右訴訟未確定のまま右手続が続行されれば町政および申立人らの政治活動に回復し難い損害を受けることは明白であり、緊急の必要があるので本件執行停止の申立に及んだ次第である。

というにある。

よつて按ずるに、本件疎明資料によれば本件は、被申立人のなした審査決定に基づく手続の続行により、申立人等につき回復の困難な損害を避けるため緊急の必要がある場合に該当するものと一応認められ、且つ本案についても理由がないとみえるときに当らないと思料されるので本申立は理由があるので主文のとおり決定する。

(裁判官 小池二八 松澤二郎 並木茂)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例